こどものとも0.1.2. 2024年5月号
はしるよ でんしゃ
村田エミコ さく
音で気持ちを味わう
版画で描かれた、ハッキリとしているけど、柔らかい線がとてもいい味の一冊。電車が坂を登って、橋を渡って、山を下り、トンネルに入って次の駅まで行く間、電車の表情だけ見ていてもドラマがあります。それにオノマトペが加わると、さらに臨場感が。誇張する必要はありませんが、読み手も穏やかに電車の気持ちに合わせながら読んでみてください。お子さんは読み手の気持ちを敏感に感じ取っているものです。
折り込み付録の作者のことばで、電車の音の繰り返しが、心地よく眠気を誘うということが書いてあります。音とリズムの繰り返しで眠くなるって、不思議ですよね。お子さんに、言葉を語りかけられる心地よさをたくさん体験させてあげてください。
絵本で同じイメージを共有できると、絵本に出てくる言葉や音を一緒に口ずさむだけで、同じ気持ちになることができます。これは、保護者にとっても、こどもを理解する大きな助けとなります。この取り組みは、その意味でもとても大きな価値があります。
☆こぼれ話
日常の中で、例えばお散歩ひとつとっても、雨が降ったり、風が吹いたり、私たちはさまざまな場面でたくさんのオノマトペを使います。それはとても豊かな言葉の文化です。その音には、言葉の意味だけじゃないもっと幅広い何かが含まれているように思います。乳児はまだ言葉の意味の世界の手前にいます。かなり意味はわかっているとは思いますが、言葉を持つ前の人たちにとっては、オノマトペは第一言語みたいなものかもしれないなぁと思います。
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