前回のあらすじ
物語絵本の歴史を掘り下げてみたいと話を進めてきました。物語の役割は「出会う」っていうこと。その中に自分を見つけたりする、という話まできました。
藤田進(以下、進):「物語る」という行為は、人類が太古から受け継いできた口承文化です。そして言葉で受け渡されてきた「物語」が、文字に切り替わって本が生まれました。
松本崇史(以下、松):そう、そして今は文字から映像に切り替わりつつある。僕ら世代は文字の文化だけどね。
進:今まさに、映像や視覚優位の情報処理世代が育っています。今はスマホさえあれば、どこでも映像を共有できる。つまり、イメージの交換を言葉ではなくて映像でし始めている。
松:そう、この変化によって何が起こっているのかまだ誰もわからない。言葉優位じゃなくて映像優位でいろんなことが伝承されていく可能性もある。僕たちは「語る」ことそのものを見直したい。
進:「語る」ってことを見直す?
松:普通の会話の重要さを見直すことじゃないかな。音声になっても言葉は言葉だし、どんな媒体であれ、対話 / 会話があるから、人は人な気がする。
進:日常にある会話の大切さってことか。
松:食卓とかお風呂の中、そういう日常の会話。生活の中にある、たあいもない言葉、整っていない言葉の中にこどもは生きている。
進:その中で、絵本は対話を生み出すためにも機能するよね。日常の会話を引き起こす媒体にもなる。
松:そう。絵本を読み合う対話(声で伝える)ってこと。そして共鳴し共感する対話(あなたはどう感じるの?)という2つの対話が、絵本によってできる。
進:こどもの生活全体から見ると、物語絵本ってほんの一部だけど、ものすごく大切な気がする。
松:だからさ、いろんな環境でこどもは生活しているわけで、絵本が果たしている役割はそれぞれ違うんだよね。
進:僕らは、その絵本の役割の「幅」ってやつを捉え直す必要があるのかもね。物語絵本の歴史をたどる一つの視点になる。
松:同じ絵本でも言葉でも、人によって受け取ることは違う。つまり彼らにとっての絵本の役割は、各個人でも違ってくるんだ。そういう幅をもっと意識したい。(つづく)
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