あかちゃんの気持ちを理解すること。乳幼児の発達を学び始めた時に、ふと学びのゴールって何だろう?と考えました。思い浮かんだのが「気持ちを理解する」ということ。どうやら、ぼくの関心は「乳児と通じ合う」というようなことなのです。 あるとき、首をひどく寝違えたことがありました。目を覚ましたのですが、少しも頭を持ち上げることができないのです。天井をみたままぴくりとも動かない。まるで、上半身をがっしり固定されてるようなのです。これは一体どういうことかと、手は動くので体を触りながら、自分の身体を調べていくと、原因は首。手で動かさないと頭が動きません。左右上下にも動かないので、寝返りもできない。立つことも座ることもできず、少しも身動きが取れません。地面に身体がめり込んでいる感じ。 「首が動かないだけで、全身がコントロールできなくなるのか! 」と同時に、「あかちゃんもそうじゃん!」と、一瞬で、いろんなことが結び合った瞬間でした。その後、少しずつ首を手で動かしながら、緩めていきながら、自分の手で自分の頭を持ち上げて、なんとか起き上がりましたが、前方しか見ることのできない直立不動状態。すこーしずつ筋肉を緩めて可動域を確保したのでした。 この体験は、首がすわる前の乳児の気持ちを理解するのに、とても役立ちました。あ、なるほど、こういう状態か……と。全身で重力を受けてる。しかも、ずーっと。そこから、自分の身体を動かしながら、成長していくわけですから、彼らは、日々のハードな筋トレと挫けない強い心、そして、世界への飽くなき好奇心を兼ね備えたタフな連中なのでした。
2023年度の講座3は「乳児の身体・眼・手の運動発達から考える保育の手立て」というテーマで、野藤弘幸先生をお招きしました。収録を聞きながら、前述の首を寝違えたことを思い出したのですが、その理由は、素晴らしい講座内容に加えて、講師が乳児の運動発達を乳児になりきって、実演してくれるからなのです。気持ちを理解するには、同じ目線、同じ姿勢、同じ動きをするとわかることがたくさんある。そんな講師のマイルドめな写真を一枚ご紹介。
乳児も幼児も、たくさん心も体も動かしながら、自分を形作っていきます。そして、「気持ちがあるから、体が動く」ということと「身体を動かすことによって、気持ちを理解する」という両輪がある。もちろん、両方が大切なのですが、乳児期は、運動発達を理解することによって、こどもの育ちを支援できる場面がたくさんあります。この講座、保育の具体的な手立てが、明快に示されていますよ。 ご視聴の場合には、講師と同じ姿勢をしながら見るのがおすすめ。頭だけじゃなくて、体で理解する方が、学びが深い気がするんですよね。
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