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わが子が幼児の時代に絵本を読んでやれる親の幸せは大きいです。わが家の場合は、絵本から幼年童話と呼ばれる「エルマーのぼうけん」「大どろぼうホッツェンプロッツ」シリーズなどを読み、小学生になってからも読み続けました。エッツの『海のおばけオーリー』やエルジェの「タンタンの冒険」シリーズはコマ割りなので読むのには時間がかかるのですが、こどもは食い入るように見つめ、楽しんでいました。そのうち自分で読むようになっていました。読めない漢字もあるはずなのですが、絵が詳しく描かれていて、登場人物の掛け合いにユーモアがあり、リズム感たっぷりな冒険物語だから読めてしまうのです。自分で本を読むということに関してこのシリーズの役割は大きかったと思います。まずは自分でおもしろいと思う本に出合うことですね。
興味と関心があればどんな本でもいいと思います。親として読んでほしいと思う本はあるでしょうが、読書は自由でプライベートな楽しみです。いつ、どこで、何を読んでもいいという自由が保障されていることがとても大切です。どんなにおもしろい本でも「読め」と言われたら読む気がしなくなります。自由が侵されるからです。なので、親が干渉しないことをルールにしてください。「読みなさい」などとは決して言わないこと。そのうえで、読んでほしいと思っている本を本棚に並べておいてください。そして親自身が再読して楽しんでください。もし、会話の中でその本の話題が出たら「〇〇はおもしろかったなぁ」くらいにしておきます。こどもが読んだとしても「どうだった?」とは聞かず、こどものほうから話題にしてきたら、それに付き合って楽しむことにします。
長男が小学校3年生くらいで、まだまだ僕が読んでやりたい気持ちが大きかった時、とても不機嫌な様子で学校から帰ってきました。友達と何かあったのかもしれません。僕は、ちょっと厚めで自分では手に取らないだろうと思われる本を手にして「これ、読むけど聞く?」誘いました。すると不機嫌なまま、そばに座ってくれました。読み始めて10分もすると表情が穏やかになっていました。物語の力に驚きました。それはミヒャエル・エンデの『モモ』で、彼とモモとの初めての出会いでした。
長男だけでなく、小学生になったこどもたちに児童文学をどんどん読んでやりました。『チョコレート工場の秘密』、『ハイジ』、『大草原の小さな家』、『赤毛のアン』。どうぞ読んでやって一緒に楽しんでください。そして自分で読み始めたら、何を読んでいようと干渉しないことです。なぜなら、こどもは自分自身と向きあって生きていく術を身につけている時だと思うからです。
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