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僕が一番好きな絵本は土方久功さんの『ぶたぶたくんのおかいもの』(福音館書店)です。初めて一人でお買い物にいくぶたぶたくんを出迎えるお店の人たちの対応が本当に優しくて、読んでいると自分がお店の人と話している気持ちになり、うれしくて元気が出ます。
はじめに迎えてくれるパン屋のおじさんは、開口一番「ぶたぶたくん、きょうはひとりで おつかいかい? かんしん かんしん」と褒めてくれます。おじさんの愛情は、このあとも続く、「かんしん かんしん」の連発でわかります。次に出迎えてくれる八百屋の早口お姉さんも、お菓子屋のゆっくりおばあさんも、ぶたぶたくんの気持ちを深く理解して、ぶたぶたくんを褒めちぎります。こどもの近くにこんな大人がいたら、こどもはどんな出来事に出会っても、元気に大きくなるに違いないと思います。
そして、ぶたぶたくんには、かあこちゃんとこぐまくんというすてきな仲間がいるのです。こどもに必要な関係は、見守ってくれる大人と、心が通じ合う仲間です。土方さんはその仲間たちの首にリボンをつけてくれました。ぶたぶたくんは黄色、かあこちゃんは赤、こぐまくんは青です。これはこの絵本を読んでもらったこどもたちが、ぶたぶたくんごっこができる仕掛けです。極め付きは最後のページの地図です。お買い物の道順がたどれます。わが家の絵本の地図には、一本線が書き加えられています。誰が描いたかわかりません。読んだあとすぐに地図の上でお買い物をしたのです。
奥様の敬子さんは、「土方おじさんはこどもが好きでした」と記しています※。近所のこどもたちも土方おじさんを大好きだったようです。僕はもっともっとこの絵本が好きになって、土方さんのようにこどもを楽しませる人になりたいと思っています。こどもに「大好き」と言われると、うれしくて元気になりますから。
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